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使う前に、選ぶ前に、これだけは知っておきたい部品のジョーシキテック君の豆知識

今さら聞けない あんな質問、こんな疑問を、RSが代わりに伺ってきました。

今回は【3端子レギュレータ編】です。

<取材協力:東芝セミコンダクター 様>



変換と安定化

■ 電源の分類

 - 今はスイッチング電源が主流だと教わりました。

電子機器内部の各所に電源を供給するために電圧変換と安定化機能を備えた回路がレギュレータ(Regulator)です。要求電圧や電流容量などは個々に異なるので、相応しいレギュレータの方式は一通りではありません。<図1>はレギュレータICの方式分類です。スイッチングレギュレータは外付け部品が必要となりますが降圧・昇圧共に可能で、高効率・低損失なため近年大量に使用されています。ただし、ノイズやリップルなど出力特性の面ではリニアレギュレータと比較し見劣りします。別の言い方をすれば、入出力間の電圧差が比較的小さく電流容量も少ない場合や、高感度・微小レベルを扱う回路にはリニアレギュレータが有利です。シリーズレギュレータの原理を<図2>に示しました。入出力間にまたがるトランジスタは可変抵抗器として作用し、負帰還によって出力電圧が一定になるように制御されます。入出力の差電圧×出力電流に相当する電力損失があること、負帰還部を除けば入力電流は出力電流と等しいことを憶えておくと良いでしょう。なお、シャントレギュレータは、基準電圧の発生など限られた用途で用います。

図1:レギュレータICの方式分類

レギュレータICの方式分類

図2:シリーズレギュレータの原理

シリーズレギュレータの原理

簡単で安心

■ 電源の定番IC

 - 一枚のボードでも何種類も電源が必要で困っています。

回路設計の内で電源は重要な要素なのですが、システムの中心機能の設計が先で、電源は後回しになりがちです。すなわち、電源設計に与えられる時間が少ないわけです。一方、電源をゼロから設計するというのは大きな負担です。効率の良い電圧変換と優れた安定度を満たす回路を考えるだけでも大変ですが、実際の機器に適用するわけですから、過熱や負荷の短絡などに備えた保護回路なども合わせて考えなければなりません。そんなときに助かるのが3端子レギュレータです。3端子レギュレータは入力と出力、それにグラウンドの3端子しか無いシリーズ方式のレギュレータで、市場で永年実績を持つ電源の定番ICです<図3>。入出力に指定されたコンデンサをつなぐだけで使用することができ、特別な設計が要らないのが最大の特長です。もちろん、各種の保護回路も内蔵されています。出力電圧は固定で3.3V,5V,12Vや負電圧などがあり、電流容量も30mA~1Aクラスまでラインアップ(ただし、各社で異なる)されています。

因みに、外部回路の付加によって電圧可変や出力電流増強なども可能ですが、それでは設計不要のシンプルさが失われてしまうので、出力電圧の可変やオンオフなどが必要なときは専用の制御ピンをプラスしたタイプのレギュレータを利用するのが便利です。

図3:3端子レギュレータの例

3端子レギュレータの例

標準タイプとLDOタイプ

■ 選択と応用

 - 電圧と電流が回路に合うものを選べば良いわけですね。

3端子レギュレータ選択の基本は出力電圧と出力電流です。ただし3端子レギュレータは初めて世に出てから年月を経ており、その間に幾つかの派生を生じています。もっとも典型的なのはLDO(Low Drop-out)タイプと呼ばれる3端子レギュレータの出現です。従来からのものを標準タイプと呼ぶとすれば、LDOタイプは入出力の電圧差(ドロップアウト電圧)が小さくても使えるのが特長です。標準タイプではドロップアウトを最低2V程度は確保しなければならないのに対して、LDOタイプのものでは1V以下、品種によっては0.5V以下でも動作します。最近の電子回路は低電圧化が進んでいるため、大きなドロップアウト電圧を確保できないことがあります。また、ドロップアウト電圧が小さければ電力損失も小さくなるので低消費電力になります。

<図4>は標準タイプとLDOタイプ(出力部)の内部ブロック例です。両者では入出力にまたがるトランジスタ(パストランジスタ)の使い方に違いがあり、標準タイプはNPNトランジスタのエミッタを出力(エミッタフォロワ)としているのに対してLDOタイプではPNPトランジスタのコレクタから出力しています。こうすることで小さなドロップアウト電圧での動作が可能になるのですが、実はこのことが負帰還の特性にも違いをもたらすため、LDOタイプは標準タイプに比べて負帰還の安定範囲が狭く発振しやすくなります。このため、LDOタイプは出力に接続するコンデンサの容量やESR(等価直列抵抗)等に注意が必要です。具体的はメーカや品種それに出力電流や負荷端に接続されるコンデンサの種類などによって安定性が異なるので、使用に際してはデータシートの指定に従うと共に、実装後は発振有無や過渡応答確認など安定性をチェックしてください。なお、標準タイプなら発振の危険が無いというわけではなく、LDOタイプ同様に指定されたコンデンサを入出力の直近に接続する必要があることに変わりありません。

図4:3端子レギュレータの内部回路構成。標準タイプとLDOタイプ(出力部)

3端子レギュレータの内部回路構成。標準タイプとLDOタイプ(出力部)

予期せぬ出来事

■ 外部からの異常対策

 - 入出力のコンデンサ以外に注意することはありますか。

3端子レギュレータは簡単に安心して使えるのがメリットですが、放熱などパワーデバイスとしての注意事項は守らなければなりません。また、入力や出力に異常な電圧が加わるなどの事態が予想される場合はICの保護対策が必要です。<図5>A~Dにその例を示します。Aは入力に一時的な高電圧が加わる恐れのある場合の対策で入力に抵抗とツェナーダイオードを付加します。Bは出力電圧が入力よりも高くなる場合の対策です。何らかの原因で入力電圧が急低下した場合、出力には大容量のコンデンサが接続されているために電圧が維持され、一時的に入力よりも出力の方が高電圧になることがあります。同様に複数の電源からなる回路の場合も他の電源から電源供給される形になって出力電圧が入力より高くなる可能性があります。したがって複数電源の場合は各々にBの保護ダイオードを付けておく必要があります。Cは出力がゼロを超えて負まで振れる場合の保護回路です。インダクタンス負荷などの駆動回路で必要になります。Dはオペアンプなどで正負2電源とする場合の保護例です。マイナス側の電源がわずかに速く立ち上がった場合にプラス側の出力が負電圧になって立ち上がらなくなることを防止しするためのもので、BとCを組み合わせた形になっています。

図5:入出力異常からの保護回路例

入出力異常からの保護回路例

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